JC19 特種東海製紙 [特殊紙] ×ダニエル・ライバッケン

R&D 倉本 仁

染めと色の研究の積み重ねに
さらなる挑戦を重ねる紙

私たちの生活は隅々まであらゆる「紙」に支えられている。技術革新も、高度情報化も、アートやデザインにおいての表現の欲求も際限ない昨今、それらを常に受け止める素材のひとつが紙ではないだろうか。

特種東海製紙は、時代の変化を察知しながら人々のニーズの一歩先を行き、もはや私たちが日常の中で無意識に使用している紙を絶えず生み出し続ける製紙メーカー。特殊紙、産業用紙、生活商品の3つの事業で、高い品質を保つ生産技術と、独創性を追求する開発姿勢を発揮している。特に、紙本来の美しさを生かしたファンシーペーパーをはじめ、紙が持ち得なかった働きを実現させる機能紙、偽造防止用紙、圧着ハガキなど、5000種以上のバリエーションがある「特殊紙」の数々は、社会を支えている。

ノルウェー出身で現在はスウェーデンを拠点にするダニエル・ライバッケンは、光や色が生み出す現象をとらえてプロダクトに変えることで人の感覚に触れるようなアプローチで、近年最も注目されるデザイナーのひとり。紙という素材自体をつくるマニュファクチュアの個性を引き出して表現するには、デザインの要素を見出すダニエルの感性が生きてくるだろうと考えた。

紙に関する資料が揃う特種東海製紙のショールーム「Pam」でさまざまな特殊紙に触れたダニエルは、中でも150色(現200色)の色を持つを展開するファンシーペーパーの代表格「TANT」に着目。パルプの段階で染色するため繊維の一本一本まで確実に染め上げる技術と、わずかな色調の違いも見極める目があるからこその豊富な色数。ダニエルが提案したのは、1枚の紙の中で表現する繊細なグラデーション。特種東海製紙の職人の技術により、30秒で約30mのスピードで抄紙する機械で、黄色から薄緑へと微妙に変化する染色を実現した。染めと色の研究の積み重ねに、さらなる挑戦を重ねる表現となった。

静岡県にある特種東海製紙の三島工場にて、タントシリーズの説明を受けるライバッケン氏とR&Dの倉本仁氏。

プロセス1

イタリア語でたくさん(=Tanto)という言葉を由来に持つTANTシリーズは、世界最多の150色(現200色)の色を持つファンシーペーパー。色名はマンセル色立体に沿って感覚的ではない記号と数値により設定し、豊富なカラーバリエーションを管理している。

プロセス2

微細な色調の差を見分けながら並び変えることでグラデーションを作り、細やかな色彩感覚を養うトレーニングツール。特種東海製紙の企業ミュージアムである「Pam」にて展示されている。

プロセス3

特種東海製紙が誇る、多様な柄と色合いの紙のバリエーションが全て入った見本帳。

プロセス4

工場内で紙を抄く工程。30秒ほどで30m長さの紙が出来上がる。

プロセス5

特種東海製紙TOKUSHU TOKAI PAPER

特殊紙、産業用紙、生活商品の3つの事業を中核として、高い品質を保つ生産技術と、独創性を追求する開発姿勢を発揮する製紙メーカー。

ダニエル・ライバッケンDaniel Rybakken

ノルウェー出身で現在はスウェーデンを拠点に活動。光や色が生み出す現象をとらえてプロダクトに変えることで人の感覚に触れるようなアプローチで注目されている。

特種東海製紙
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ダニエル・ライバッケン
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