JC08 柴舟小出 [和菓子] × ポーリーン・デルトゥア

R&D 熊野 亘

伝統を更新する金沢らしい和菓子づくり

加賀藩の城下町として栄えた金沢。独自の武家文化が育てた特有の食文化から生まれた柴舟小出は、金沢らしい風土を守り、育みながら、その質の高さ、独創的な信念を保ちつづけてきた。
ポーリーン・デルトゥアは、若手ながら機能性やディテールへのこだわりに定評があるデザイナー。ジャパンクリエイティブは対局にいるように見える両者が出会うことで、どのような化学反応が起きるかを期待した。
完璧な技によって華やかな和菓子が次々にでき上がる現場を見たデルトゥアは、独自の視点から切り出した日本の景色や風景を、柴舟小出の技で表現できないかを模索する。
連なる山をイメージしながらゼリーと羊羹をレイヤー状に重ねたり、石庭の箒目の印象を幾何学状の型で表現するなど、文脈を損ねることなく、これまでにはなかったプロセスやトライアルを伝統技術のなかに持ち込んだ。また、小鳥の足跡を模した非常に繊細かつ緻密なモチーフを、柔らかい落雁の上に付けるために、和菓子づくりで一般的に使われる木型ではなく、アルミ製の金型を採用するという斬新な試みにも挑戦している。
眼下に金沢21世紀美術館が隣接する兼六園のごとく、伝統的を受け継ぎながら最新の文化や技術をしなやかに取り入れる金沢らしい和菓子と言っても過言ではないだろう。
プロダクトや家具のみならず、日本の食文化にも鋭く切り込んだジャパンクリエイティブの試みは、新奇のプロポーザルに対しても、積極的に実現する柴舟小出の実力の高さを顕在化。このプロジェクトは現在も進行中であり、さらに今後ラインナップの充実を予定している。

柴舟小出の菓子を頂く。

プロセス1

プランの方向性を確認。

プロセス2

工場を見学。

プロセス3

焼印を入れるためのコテ。

プロセス4

「三作せんべい」の製造風景。

プロセス5

落雁の木型。

プロセス6

型抜きして「layers」は作られる。

プロセス7

柴舟小出Shibafune Koide

1917年創業して以来、金沢で親しまれていたせんべい「柴舟」をつくり続けている。戦後、2代目が製法を刷新し、手間のかかる方法ながら、より軽い口あたりと艶のある美しさを持つ柴舟が誕生した。「金沢のお菓子はいいですね」というコンセプトのもと、季節ごとの行事用から日常的なものまで、金沢らしい菓子を丹念につくっている。

ポーリーン・デルトゥアPauline Deltour

1983年フランス生まれ。国立高等芸術学校(ENSAAMA)で応用芸術とデザインを学んだ後、国立高等装飾美術学校(ENSAD)にて工業デザインを学ぶ。06年からコンスタンティン・グルチッチのスタジオに勤務。09年独立する。現在はパリを拠点にプロダクト、インテリア、空間など幅広い分野で活躍。アレッシィや無印良品などの仕事を手がけている。

R&D 熊野 亘Wataru Kumano

1980年生まれ。2001-08年にフィンランドへ留学、
ヘルシンキ芸術大学(現アールト大学)大学院を卒業後帰国、
Jasper Morrison Studio Tokyoでアシスタントデザイナーを務める傍ら、
2011年に”KUMA”を設立し、インテリア、家具、プロダクトのデザインや
プロジェクトマネージメントを手掛けている。

柴舟小出
柴舟小出
ポーリーン・デルトゥア
ポーリーン・デルトゥア
R&D 熊野 亘
R&D 熊野 亘