JC10 昭和飛行機工業 [アルミハニカム] × 川上元美

R&D 熊野 亘

“INSIDE OUT”

アルミハニカムを表舞台に立たせる新発想

ジャパンクリエイティブ(JC)という名を冠しているのに何故日本人のデザイナーを起用しないのか。発足当初は、海外のデザイナーに見立ててもらうことを念頭に置いていたが、もちろん構想の中に日本人デザイナーの名前も挙がっていた。その一人が、川上元美だ。川上は60年代に、アンジェロ・マンジャロッティのスタジオに務めヨーロッパが最も湧いていた時代を経験し、日本でデザイン事務所を設立。家具、プロダクト、工業製品、食器……、川上の守備範囲は幅広い。さらに、ひとつひとつの仕事への突き詰め方は並大抵のものではなく、デザイナーという名よりも求道者と呼びたいくらいだ。
そんな百戦錬磨の川上が挑戦をする素材は、昭和飛行機工業が製造するアルミハニカムである。同社は、その名の通り、1937年に最新型の航空機を製造するために設立された会社で、80年近くに渡り航空機関連製造でその技術力を高めてきた。
ハニカムとは、無数の六角形が“蜂の巣状”に集まった構造体。航空機用の構造部材として開発されたもので、同社では50年以上にわたる製造実績がある。なかでもアルミハニカムは軽く耐食性に優れた部材で、もともとはパネルの芯材として使われてきた。
そこで川上が提案したのは、着色をしたアルミハニカムの両面に強化ガラスを貼ったパーティションとシェルフとテーブルというラインナップだ。ハニカム構造のセルの大きさを細かく吟味し、光の透け感を調整。これまでにない新しい質感の家具が誕生した。

ハニカムの特性についてリサーチを進める。

プロセス1

ハニカムの製造工程を見学。

プロセス2

アルミの板を積層させて、部分的に接着。

プロセス3

それを展張させることでハニカム構造が現れる。

プロセス4

サンプルを製作し検討。

プロセス5

ハニカムをアルマイト加工により着色。

プロセス6

昭和飛行機工業株式会社Showa Aircraft Industry

1937年の創業時より1940年代半ばにかけて輸送機を中心に飛行機を製造。その事業で培った軽量合金に関する知識と経験に基づく「板金加工」、「切削加工」「溶接・熱処理」「表面処理」といった技術力と「航空機装備品」や「軽合金構造物」「ハニカム」などの研究開発力によって日本を代表する軽量化製品の製造・販売企業として国内外に知られている。

川上元美Motomi Kawakami

東京藝術大学卒業後、アンジェロ・マンジャロッティ建築設計事務所に在籍。1971年「川上デザインルーム」を設立。今日まで、プロダクトデザイン、インテリアデザイン、環境デザイン等広範囲の分野で作品群を創出。数多くの賞を受賞している。それらの活動を通して地場産業の活性化にも貢献。2013年、日本デザイン振興会 会長に就任。

R&D 熊野 亘Wataru Kumano

1980年生まれ。2001-08年にフィンランドへ留学、ヘルシンキ芸術大学(現アールト大学)大学院を卒業後帰国、Jasper Morrison Studio Tokyoでアシスタントデザイナーを務める傍ら、2011年に”KUMA”を設立し、インテリア、家具、プロダクトのデザインやプロジェクトマネージメントを手掛けている。

昭和飛行機工業株式会社
昭和飛行機工業株式会社
川上元美
川上元美
R&D 熊野 亘
R&D 熊野 亘